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ろうか。
「男はつらいよ」の寅さんこと渥美清さんが、このたび笑いと人情を心に残し、帰らぬ旅にでた。お別れ会には、二万一千人もの人々が遺影に花を供えたとの報道があったが、それは現実への異議申立てを、やわらかな人情喜劇の世界で描いた映画のなかの、寅さんの生きる庶民のユートピアに、多くの人々の共感を呼んだのであろう。
又東京のド真中のアパートで、七七歳の母親が四一歳の病気の息子と共に餓死するという事件があり、母親がノート一〇冊に綴った日記が残され、これが全文一般公開され、刊行された本によると、「助けてほしいが、相談する人もいないし、せんべいだけを食べて生活し、残金も二八円しかない。息子と一緒に死なせてほしい」などと記されているが、「飽食の時代」といわれているいま、この母子はなぜ餓死しなければいけなかったのか、問題は種々あろうが、先ず社会の人々の心の奥底には誰れにでも人情、愛情だけは育まれていなければならないということを痛感した。恵まれない人々、家庭に恵まれない子どもは、いつの世にも数多く存在する。
これらの人々に、温かい手を差しのべる人々を育むためには、歴史認識のあいまい
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